18話)



 あの後、マンションに戻った真理なのだが、とても食事を作れたものじゃなかった。
 歩が言った言葉を何度も反芻して、ただのナンパだったのか。それとも実は“茉莉”であることを知っていてあんな事をしたのか・・。
 真相を確かめようとしたのだが、全く判別がつかないのだった。
 ただのナンパだったのだ・・と思うと、そうかとも思うし、けれども歩の態度は何かを勘ぐっている上での行動のように思うと、それも最もだとも思えた。
 そもそも、公園に佇んでいる真理を認めた彼は、はじめに
『いつもここでボンヤリしてるだろう?何を考えているのかなあなんて、不思議に思うんだよ。」
 と、そんなコメントを吐いていたのだ。
“いつも”という事は、真理が買い物に行ったついでに公園に寄っている事実を、数回は目にしていることになる。
「やっぱり、私だとバレている・・。」
 呟いて、首を振る。
 茉莉だと知っているのだとすると、なぜ歩はあんな行動をとったのだろう?
 まるで初対面のように、自己紹介したりして・・・。
 歩の意図が全く見えない以上、茉莉は真理として彼の前で居続けなければならないだろう。
 バーで決意したとおりに・・・。
 里中真理を通すのだ。